ルピナスの美しく咲く野原は、激しい雨が降りました。
雨が上がると、空には大きな虹がかかりました。
水たまりは鏡のように、空の景色を映しています。
画面中央やや右に一応人がいます。動物にもみくちゃにされて、メガネやら帽子が吹っ飛ばされている「ノアおじさん」です。
この作品は画用紙の上にアクリル絵の具描いていて、1〜2晩で描いた作品です。
救世軍清瀬病院の病棟内での個展用に描いた作品です。
病院での展示は、膨大な壁面を埋める作品をたくさん作らなければ寂しい展示になること間違いなしでした。
なので、たくさんの作品を描き下ろすことになったのですが・・・
元々専門の日本画だと制作時間が多大にかかってしまうため、どうしても間に合わず、
当時はスピード勝負でアクリル画をたくさん描きました。
下絵も構図もほとんど全部ぶっつけ本番。
筆の進むままに、ひたすら手を動かしていたような。
しかも当時、生活を揺るがすショックなことがあって、個人的にはもうメンタルがバキバキに折れていた当時。
しかも平日は普通に仕事をしていて、忙しい日々。
なのに幸いなことに絵の構想は途切れることがありませんでした。
それどころか、心は絶望なのに絵の構想は色鮮やかで、なんとも平和で、キラキラしている世界が
一枚完成してまた一枚・・・
どんどん降ってくるから不思議でした。
そういった明るい絵を描きながら自分もだんだんと癒され、力を受け、立ち直っていったような気がします。
この作品の男性は「ノアおじさん」です。
休日に仕事をしてたら邪魔されている場面です。
ノアとい名前を聞くと、大きめの車の種類のノア、そして旧約聖書の創世記に出てくる人物などが有名ですが
後者は方舟で動物たちを洪水から救ったことでも有名です。
この「ノアおじさん」は、まあ前世?先人の徳でしょうか?本人の遺伝子から発せられるニオイでしょうか?
理由や経緯は不明ですが、羨ましいくらい何かとありとあらゆる種類の動物に好かれるらしいのです。
私は物心ついた時から実家で猫を飼っていて、テーブルで何か絵を描いたり、問題集を開いたりしてると、
猫が邪魔して乗っかってきたりするのが・・・たまらず大好きでした!
今は猫ではなく他の動物を飼っているのですが、動物のわがまま?っていうか、本当に可愛いですよね。
もういつでも邪魔されたい・・・。鬱陶しい!と思うくらい邪魔されたい。構ってほしい・・・。
むしろ、動物目線で飛びつきたい、構い倒したい人物って、どんな人なのかな・・・と想像して描いたのが「ノアおじさん」です。
ルピナスの美しく咲く野原は、激しい雨が降りました。
雨のなか、動物たちはきっと雨宿りをしていたでしょう。
雨が上がって、行きたい場所へ喜んで出てきました。
そして空に大きく現れた約束の虹を背に、再会を果たす時が来たようです。
時が満ち、オスメスのペアで。
命を救ってくれた大切な人へ、会いたかった人へ会いに行きました。
この作品の世界には、そんなストーリがあったと思います。
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